「あら、凄い素敵な花束ね、ちょっと見せて」
お世話になった方にお渡ししようと
その方をイメージして春を予感させる花をいくつか選んで
包んで貰った花を抱えて行き先に向かう道中でのこと。
対応して下さった花屋のお姉さんが
私の選んだあまり色みのない花々を
とても華やかにアレンジして包んで下さり、
イメージ通りに仕上がったことに嬉しくなり
花束を抱えながら少し微笑んでいたところで
60代ぐらいのおばさまと目が合い、声をかけられた。
花束のそれぞれの花を愛でるように覗き込むおばさまの姿は、
少女のように目が輝いていて、やさしかった。
「これはコデマリね。
まだつぼみだから、これから春にむけて長く楽しめそうね。」
女性は何歳になっても、花にときめくもの。
しばらく駅の構内で立ち止まって話していると、
通りかかる人もこちらに目線を向ける。
この様子を見て 時々、やさしく微笑む人もいて、
その場所には穏やかな空気が漂っていた。
美しいものを見ると、人の心のドアは自然にふわっと開く。
それは皆 共通のことで、美しい物を共有する瞬間は
お互いの心が開いていて ふとした会話も始まりやすい。
田舎の人々が温かくやさしいのは
常に自然にある美しいものに囲まれているからだろうな。
たとえ人の手で作られた美しいものであっても、
それらを気に留めたり時間をとって味わうことを大切にし、
常に心のドアを 開けておきたいと思う。
美しいものは、人と人とを繋ぐ
コミュニケーションのきっかけの
一つになることを改めて感じた。
土曜日の夜のこと。