マンションの階段ですれ違う時 挨拶もなく、避けるように急ぐ隣人。
10人中7人が携帯と見つめ合っている 電車を待つ人々の列。
録音された音声を流しているかのように 淡々と接客する店員。
田舎から上京してきて、そんな光景を目にする度 切なかった。
日本で一番「人」が集結する街なのに、一番「ひと」を感じない街。
時代の進化で、たくさんの資源の消費と同時に失っている「ひと」感。
それが、目まぐるしく進化する街の代償。
このまま進化を続けたら、結局「ひと」は無くなってしまうのか…。
そんなことを考えていた時。
友人の結婚式の為にネックレスを作ったのをきっかけに
自分のクローゼットに合うようなアクセサリーを、
部屋に転がっている思い出の品々を集めて 作り始めた。
すると、それが思いがけなく
「ひと」と「ひと」のふれあいのきっかけとなる道具になった。
電車の中や洋服屋、病院の待合室、喫茶店、又は旅先の街中…。
そのアクセサリーを身につけていると、
そこから不思議と初対面の人と会話が始ったり、
ふと目が合い、にっこりされることが幾度もあった。
せっかくの思い出の品々も、
スクラップブックや戸棚の中に納めてしまうと
なかなか目に入らなくなり、
気付けばそのまま何年も部屋の隅に眠ったままになる。
そこで、スクラップブックに旅先での思い出や
目に留まったものを無造作に貼り付けたり、
日記に日々の些細な出来事や気持ちを記録する感覚で、
自分にとって思い入れのあるものを並べ
いつでも身に付けて歩けるネックレスにしてみました。
それを目にする相手とのコミュニケーションのきっかけとなり、
思い出を分かち合えるのと同時に、身に付ける度に記憶も鮮明に蘇る。
そして、そこで生まれた「ひと」と「ひと」のふれあいにより
更に思い出が重ねられていく。
「思い出」や「記憶」を大切にすること。
それは世の中の様々なことを大切にする気持ちに繋がる。
人も ものも 心も。
memory scrapped accesories (2008)
- - - - - - - - - - - - - - - - - -
使い終わったドラム缶を加工し
きらきらと太陽の光を反射する“スチールパン”という楽器を作り、
万遍の笑みを浮かべ 海岸沿いの路上で美しい音色を響かせる人々。
幼い頃、旅好きの両親に連れられ訪れたカリブの島々で見た
彼らの日常の光景が、とても印象に残っている。
普通なら消費してしまうようなものさえも、美しいものに変えてしまう。
そしてそこから更に笑顔と温かい気持ちを周囲に広げてゆく。
・・・そんな感覚にとても惹かれます。
今回作品に使用した材料の中心は、
昔から捨てられずに部屋にあったものです。
海に遊びに行った時に拾った貝殻。
旅先で買ったが壊れてしまったキーホルダー。
頂き物のラッピングに使用されていたリボン。
三年間お世話になった高校の制服のボタン。
長年愛用したお気に入りの洋服の端切れ。
祝い事がある度に増える演出道具・・・等。
傍から見るとガラクタのようなものでも、自分にとっては思いのこもった宝物。
それらを人を飾る綺麗なものに形を変え、
コミュニケーションのきっかけとなるものに出来たらと思い、製作しました。
紙をそのまま生かして使用したり様々な素材を合わせ、
時間の経過と共に 思い出の欠片にも更に味が加わり、自分と共に風化する作品です。









